ひのきのぼうの沼日記

そう、人生は沼だらけ

五月花形歌舞伎 戻籠色相肩/金幣猿島郡

一泊して昼の部も見てきました。

まず「せっかくだから」とついでのように昼の部のチケットを取った自分を殴りたい。


素晴らしいエンターテインメントでした。



【戻籠色相肩】

禿を乗せた駕籠を担ぐ次郎作と与四郎。
二人と禿で各色町の違いやらお国自慢を始めるのだが、実は次郎作と与四郎の二人は…!
という舞踊劇です。

次郎作を勘九郎さん、与四郎を歌昇さん、禿を児太郎丈が演じます。

もう一度言います。

禿を児太郎丈が演じます。


……そう。


禿が児太郎丈なんですよ!!!


禿に見えない!!!


けどかわいい!!!


おませな禿のたよりちゃんに可愛さしか感じない!!!


児太郎丈の美しさは皆様ご承知の通りだと思うんですが、児太郎丈の可愛さに気づいた時、人は大人の階段を一歩上るのです(個人の感想です

笑っていいともでゲストトークの面白さがわからずゲームコーナーだけ見ていた子供の時分。
ある日突然テレフォンショッキングの面白さに気づいたときの、自分大人になったなぁ感……
あんな感じ。


どっしり女房から、梅ごよみのお蝶ちゃんみたいな可愛い役もどんどん増えて、本当に幅広く演じられる女形になってほしい。
そして、お父様と同時襲名で、福助になったら、私、泣くな。

えー、ネタバレになりますが、
次郎作と与四郎は実は、石川五右衛門と真柴久吉です。
二人の正体のバレ方が「いやいやいや」とツッコまずにはいられない。

あと私、歌昇さんはその容姿から野崎村の久松のようなお役が似合うのかと思ってました。
でも昼の部の二作品見ると、声も良いし、将来は荒事などの大きいお役の第一人者になるかもという期待が出来ました。



【金幣猿島郡

三代猿之助四十八撰の内、金幣猿島郡

むっちゃくちゃ面白い。

猿翁さん演出凄すぎる。

スーパー歌舞伎で歌舞伎を知ったけれども、古典見に行ったらやっぱり意味わかんなくて寝た」という方、スーパー歌舞伎の次のステップとしてはこちら最高におすすめの作品となっております。


頼光に思いを寄せる清姫と、七綾姫に思いを寄せる藤原忠文猿之助さんが演じます。
頼光・七綾姫カップルは勘九郎さんと七之助さんです。
叶わぬ恋が恨みに変わった二人の霊が合体し、頼光と七綾姫に襲い掛かるというお話です。
…若干、全部“七綾姫のせい”と感じないこともない( ´∀`)つ


見どころは演出効果の数々でしょうか。

でも個人的には、照明、炎、影、宙乗り……様々な演出効果を駆使しているのですが、「思った以上に演出効果の使用回数少ないな」と感じました。
要所要所でそういう効果を使っているので多用しているというイメージを勝手に持っていたのですが、見てみるとそこまで多くない。
じゃあ何がそこまで客席を盛り上げているのかというと、猿之助さんの演技なんですよね。
猿之助さんの見得って、他の役者さんに比べるとものすごいスタイリッシュな気がするんです。
でもそこに込められたエネルギーは120%で、スタイリッシュな箱の中にそれが詰められてるもんだからとてつもない質量に感じます。
力を持った演出効果に埋もれない役者力が、この舞台を成立させている一番の効果だと思いました。


そして感じたことがもう一つ。
猿翁さんの演出って、セル画時代のディズニーアニメっぽくないですか?
特にそれを感じるのが照明で、
黒塚だったり猿翁さんが作られた照明って、その影の伸び方や、そこで演技する役者の伸縮性(個人的にはこの言葉が一番しっくりくる)がセル画時代のディズニーアニメに似ているなと思うんです。
歌舞伎よりアニメーションを見ている感じ。
そう考えると私が生まれるより前に、歌舞伎に新しい演出をどんどん組み込んでブラッシュアップしていった猿翁さん天才過ぎる……
多分猿翁さんが居なかったら、歌舞伎は年々廃れて、今のように若手に注目が集まることもなく、助成金の分配で揉めるような“古典”芸能になっていたでしょうね。

澤瀉屋一門の功績に感謝します。





~どうでもいいメモ~
大阪松竹座新橋演舞場明治座を合体させてギュッとした感じ。