ひのきのぼうの沼日記

そう、人生は沼だらけ

はじめて街頭インタビューを受けた話

記念日だったので、仕事を早上がりして、ちょっとお高めのケーキを買って、帰り道に劇場の前を通りかかった。

休演日だったから"初日三日"の垂れ幕と新しい看板を見ながら「翌月はこの面子なのね」なんて思いながらほんの少し足を止めたら、後ろから声をかけられた。

 

「××の件についてお話を…」

 

きた。街頭インタビューだ。

初めての体験。

 

その日は朝から意識的に目をそらしたくなるような某俳優に関しての報道が続いていて、劇場前の歩道にはその件について何か言質を取ろうとテレビカメラとマイクが何台も待機していた。

休演日に何を追いかけているんだと目の端でせせら笑っていたら寄ってきた。

 

受けるか迷った。

そもそも騒ぎ立ててほしくないし、私の声がファンの声代表みたいに扱われたり、好き勝手切り取られたら嫌だなと思った。

でも、たいして愛のない奴が適当なこと言って大衆の声になるのも嫌だと思った。(だって休演日にインタビューするって、ほぼほぼファン通りがからないでしょ!)

 

で、受けた。

放送に乗るかは知らない。

 

最初に言っておく。

某緑色の豚みたいなやつがマスコットキャラクターだった某局某番組のフィールドキャスターのお前。

私はお前を許さない。

お前が出世して冠番組持ったとしても応援しないし、お前がテレビ出るたびに孫の代までお前の文句を言うと思う。

 

話を戻そう。

 

その番組は若い男性アナウンサーをインタビュアーとして起用していた。

その若者の最初に質問に私は頭が真っ白になった。

 

「今日は舞台を見に?(ニュアンス)」

 

……は?

えっ、待って私タイムリープしてる?

ちょっと上を見て、”初日三日”の幕あるよね…

もしやこの若者、この幕の意味が分かっていない?

いや、私が仕事で疲れていて日付感覚がおかしくなっているのかもしれないし、もしかして追いかけられていないけど何か舞踊の会とかやってたり…

いや、歌舞伎座の前に休演日の立て看板してあるやん。

バリバリ休演日やん。

 

「えっ今日は休演…」と返すので精一杯な私。

 

初手で私の出端はくじかれて、そのあとの質問がなかなか耳に入ってこなかった。

耳に入らないもう一つの理由としては、私が口下手というのもあるが、正直この若者の会話が上手くない。

インタビューを受けていてもまるで小泉構文と会話をしているようで、少しずつ言葉尻を変えて欲しい言葉を引き出そうとしているのがわかる。

「こうやってインタビューのキリトリって起こるんだなー」というのを話している時点で感じるやりとりだった。

きっと、こういうふんわりした「ただのファン談」もマスコミの手にかかれば、「関係者談」とか「熱心なファン談」みたいに箔がつくのだろうかと思ったり。

 

……と、ここまでは可愛いもんだ。

この程度であなたのことを孫の代まで悪く言うつもりはないから安心してくれ。

 

 

私がお前を許さないと思ったのは、

私がインタビューの最中に身体が震えるほどどうしても許せなかったのは、

彼が何度も口にした、その役者の呼び方だ。

 

「○○容疑者は」

「○○容疑者のことは」

「○○容疑者について」

 

…容疑者?

あなたはファンを求めて、新橋駅前でなく劇場前で張り込んでいたのよね?

そのファンかもしれない人を捕まえて、目の前で何度も「○○容疑者」と言いますか?

別にスタジオで容疑者と明記し呼ぶのはしょうがないけど、それをファンかもしれない人の前で何度も、それも際立たせて言いますか?

 

アナウンスの基礎で、言葉を際立たせる代表的な方法として『高低』『強弱』『緩急』『間』(あとトーンとか)を習うけど、

彼は『高』と『強』を使って、何度も「○○ ↑容疑者」と容疑者部分を強調する。

質問のたびに「○○ ↑容疑者」とわざわざ挟み込む。

そんなに何度もその言葉を使う意味は?

あなたは『高』と『強』を使ってでしか言葉を際立たせられないんですか?

『低』と『弱』や『緩急』を使って際立たせる技術はお持ちでない?

アナウンススクールからやり直せ。

 

そもそも芸能人を公人とするなら、芸名に容疑者とつけるのはおかしいのでは?

罪は私人に対しての彼に与えられるものであって、公人に対して与えるものではないのでは?

 

怒りの中で顔は覚えた。

そのあとサイトで名前もチェックしに行った。

人の心を傷つけるようなインタビューの方法をするこの若者も、その若者を教育したアナウンス室も、そのような若者を現場に立たせた報道部も、私は許せない。

 

 

そのあとインタビューから解放され、再び来月のメンバーを確認してたら他局にも声をかけられた。

 

「あの△△という番組なんですが」

「さっき裏かぶりの番組のインタビュー受けましたけど」

「もしお時間よろしければ…」

 

いや必死かよ。

でも若い女性のおそらくADさんぐらいの立場っぽい二人組で、逆に興味もないところにインタビューに向かわされたんだろうなと少しかわいそうになる。

その女性は終始「○○さん」とさん付けだった。

一応インタビューしましたというカウント稼ぎだったのかもしれないが、質問も簡潔でわかりやすい。

その番組のファンでもなかったし、なんなら「つまんない企画ばっかりやってないでもっと報道に精を出せよ」とさえ思っていた番組だったが、ほ~んの少し株が上がった。

先の番組との相対的に。

 

でもとにもかくにも一番は、

こんな休演日に人員割いてインタビューなんかするなよな。