ひのきのぼうの沼日記

そう、人生は沼だらけ

スーパー歌舞伎Ⅱ ワンピース

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スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』を見てきたのです。

「ワンピースが歌舞伎ぃ?」「歌舞伎大好きだけど怖いなぁ」「涙腺崩壊者を続出させた頂上戦争じゃん!」とウキウキと不安半々、いや不安の方がちょっと多目で臨んだのですが…

そんな気苦労バカらしくなるほど面白かったです!

私が知ってるワンピースがそこにありました!

で、歌舞伎でした!

勘三郎さんが、「歌舞伎役者が喋れば歌舞伎になる」と言ったそうですが、その通りだなと思いました。
特別歌舞伎口調がなくても、立ち姿・発声・言い回し…全てに歌舞伎が染み込んでいて、自然に歌舞伎でワンピースでした。
原作自体、任侠とか日本の文化にオマージュ受けてる部分が多いですからよく馴染む気がします。
特に衣装とか、原作に忠実な部分と歌舞伎だからこその表現が違和感なく同居してて素晴らしかったです。


【麦わら海賊団勢揃い!…って早っ!】

お話は、シャボンディでくまに飛ばされて麦わら海賊団が散り散りになるとこから、エースの死からルフィが立ち直るまでの頂上戦争編。

原作お読みの方ならお察しの通り、麦わら海賊団の揃い踏みは序盤だけです。
「折角だしもっと麦わらの一味が揃ってるところ見たかったな」と思いましたが、よくよく思い返すと、「麦わらの一味って基本個人戦だからどのシーンやっても同じか」という結論に。
いや、でもその分、ちゃんとルフィを柱に、ルフィの成長劇に仕上がってましたよ!


【オカマの印象が…】

まずキャラクター&キャストの皆さんについて書きましょうか。

麦わら海賊団が出てきた瞬間に、個人的には隼人丈演じるサンジに目を奪われました。
さすが二枚目というか、輪郭とか細身とかもうそっくりだしさ。
眉もくるんとさせてて、リアルサンジですわ。
最近隼人丈の株が私の中で上がってきてるのがちょっと悔しい(何に対しての悔しさかよくわからんが
ちなみに自分は、サンジよりゾロ派です(^q^)

ゾロは巳之助さん。
声まで再現度が高い。
巳之助さんや隼人丈はワンピ直撃世代ですからね。
ただ、ゾロかっこいい…かっこいいんですが!
巳之助さんのイメージが全てオカマのボンちゃんに持ってかれてましたよー!
ほとんどの役者さんが二、三役掛け持ちして演じられていたんですが、巳之助さんはゾロの他にボンちゃんもやってたんですよ。
その完成度たるや狂気!
イッちゃってる目、声もそっくり、高い身体能力の無駄遣いならぬ有効使い!
完成度高すぎて喉潰さないか心配なくらい。
幕間に、「ボンちゃんやってる人、ゾロの人だって!マジで!?」という声をいくつも聞きました。

で、サンジ役だった隼人丈が兼ね役でイナズマをやってたんですが、大監獄インペルタウンでイナズマとゾロで立ち回りがあるんですがすごいですよ。
これは是非劇場で体感してほしい。
歌舞伎ならではの演出を3倍増しぐらいでやってるのですごいです。
そこでやっぱりイナズマの隼人丈はめっちゃ二枚目でかっこいいわけですよ。
その二枚目の横に並ぶボン・クレー。
…うまく言えませんが、『適材適所』というのはこういうことを言うんだなと感じたワンシーンでした。
「おそらく松竹さんが配役考えるとき、一ミリもボンちゃんとイナズマの中の人を交換してみようとか思わなかっただろうな」と思いました。

ナミが春猿さんだったのですが、春猿さんにナミを演じてもらうのが見ていてこっぱずかしかったです(*´Д`*)
あの春猿さんですよ!
女形の名手ですから綺麗ですし、着物ver.のナミもよかったのですが、なんとなく「~わよ」とかいう語尾に慣れず。
なんか嬉し恥ずかし、こっぱずかしかった!

あとね、ウソップがリアルウソップだった。
チョッパーもちゃんと人型あるよ!
子チョッパーは悶えるぐらい可愛いです。

そしてこの人について語らなきゃいけません。
ルフィ=猿之助さんです。
やっぱりルフィって田中真弓さんのイメージが強いじゃないですか。
ジャンプでいうと、悟空=野沢雅子、ルフィ=田中真弓はもう耳に染みついているキャラクターじゃないですか。
もし今、「ルフィを演じてください」と言われたら、ほとんどの人が田中真弓さんのモノマネになるでしょう。
正直、第一声は真弓さんの声がちらつきまして、違和感がぬぐえませんでした。
でも猿之助さんは真っ向から歌舞伎でのルフィを体現してて、それは真弓さんのルフィとは違うけど紛れもないルフィでした。
また今回見ていて一番「自分、今、歌舞伎見てる」って感じたのがルフィでした。
ドラマとか見ててもそうだけど、猿之助さんって歌舞伎成分濃いですよね。
歌舞伎に対しての勉強量の多さが滲みだしている気がします。
ハンコックとシャンクスも演じ、涼しい顔で早替わりをこなされていました。

客演陣も豪華で素晴らしかった。

福士誠治さんのエースはただただかっこいい。
イケメンすぎて切ない。
最期のシーンは泣いた。
「おう泣かせてみろ!」と臨みましたが、案の定泣かされました。

センゴクイワンコフ・レイリーを演じた浅野和之さんはすごかった。
とくにセンゴクイワンコフの演じ分けが素晴らしい。
イワンコフは体のサイズ感以外は完璧に再現されてます。
衣装もね(^∀^)
身体張ってます。
台詞をしゃべりながらの身振り手振りはとっても素晴らしく、三谷作品の匂いを感じることが出来ます。


【二次元への挑戦】

そんな役者さんたちをとりまく舞台セット・効果の迫力たるや、とてつもないです。
映像を多用し、戦いの迫力や、世界観を構成し、BGMもワンピースらしい壮大なもの。
歌舞伎でおなじみの早替え・火が燃え上がったりする仕掛け・宙吊り・水を使った効果など、歌舞伎でウキウキするもの全部入れてきてます。
そして、それらが通常の倍以上の迫力で展開されます。
飛び六方もただの飛び六方ではなく、バク転をする人を付けることでちょっと目新しくて面白いものに。
新橋演舞場の回り舞台もどこにそんなに大きなセットをしまえるんだいってぐらい、でかいし、よく回る。
全てのスケールが大きい舞台なのですが、それに役者が負けていないのに驚きます。
セットや効果に呑まれることなく中心にどっしり人がいる舞台です。

殺陣の表現もすごいですよ。
能力者バトルをあらゆる手段で表現しています。
おそらく舞台で現存するあらゆる戦いの表現方法を試したんじゃないかってぐらい、様々な表現が使われています。
殺陣でちょっと面白かったのが、ルフィとエースが並んで戦うところがあるんですよね。
そこで、同じ空間なのに、ルフィは歌舞伎の殺陣でエースは現代的な殺陣で戦っているのが面白かったです。
歌舞伎役者さんと現代劇の俳優さんが揃い踏みしたからこそできる表現です。

もう一つ、歌舞伎独自の表現の一つに隈取があります。
一般的に赤が正義・青が悪役ということになるんですけど、個人的にうれしかったのが海軍にも赤い隈取がいたこと。
海軍頂上決戦編って描き方によっては海軍が悪者のように見えてしまうかもしれないんですよね。
でも海賊には海賊の、海軍には海軍の正義があるわけで、海軍だからって青い隈取一辺倒とかにならなくて良かったとは心の底から思いました。

こうやって書き出していると、もしかしたら歌舞伎って、映画やドラマやミュージカルとかより二次元を三次元化するのにすごい向いている手段かもしれませんね。
歌舞伎自体、顔白く塗って隈取描いて、ありえないぐらい派手な着物着て、めっちゃ独特の喋り方して、現実じゃありえない表現をしているものですから。
もしかしたら映像化不可能とか言われている二次元作品こそ、歌舞伎の得意分野なのかもしれません。


【尾田先生おつかれさまです】

最後の最後まで、エンディングも素晴らしかったです。
サニー号のクオリティが高すぎて、大道具さんの本気が見えますし、ゆずの北川さんが作った主題歌もめっちゃ良いので、ちょっとこれは歌舞伎だけで使うのはもったいない感じがします。
是非映画の主題歌とかでもう一度使ってほしいってくらい良い曲。
またその曲に合わせての映像もおしゃれ。
このワンピース歌舞伎に対して、尾田先生はいったい何枚の絵を描き下ろされたのでしょうか?
本当にお疲れ様です。
ありがとうございます。
定式幕と麦わら海賊団のコラボは必見です。

新橋演舞場がワンピースの世界に染まってて、あの世界を同じ空間で体感できて、幸せでした。
スーパー歌舞伎Ⅱの名にふさわしい新しい歌舞伎が生まれた瞬間に立ち会えて、幸せでした。



スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』は十一月まで二か月間上演されます。
是非、新橋演舞場に足を運んでくださるとうれしいです。

ワンピースが読み返したくなるし、また歌舞伎が見たくなる、そんな舞台です!




中村屋贔屓の皆さん集合!】

エンディングを見ていてびっくり!
勘九郎さんの名前がクレジットされているではないか!
気づかなかった!

…ということで、どこかで勘九郎さんが参加されてます。

中村屋贔屓の皆さん、大阪平成中村座もいいけど、新橋にも勘九郎さんがいますよ!





~どうでもいいメモ~
いつもより演舞場に響くお客さんの声が明るいというか…
客層の違いが如実に…(((( ;゚д゚)))