新橋演舞場で美少年が主演を務める『少年たち~闇を突き抜けて~』を見てきた。
この舞台は2021年のHiHi×美少年の少年たちから3年連続で見ている。
2021年は初主役の初々しさが等身大の少年の必死さにシンクロする部分があり良かったのだが、
2022年は正直お芝居のレベルが上がっておらず残念に感じていた。
それもあり今年はチケットを取るのを迷ったが、SnowManの岩本さんが指揮を執るということで、岩本さんの構成・演出・振付を目当てに行くことに。
結論、ずば抜けて今年の少年たちは面白い。
SnowManファンという色眼鏡をとってイチ舞台ファンとして見ても、とてもよく構成されていて満足感が高い。
(以下、Hi美の少年たちしか見ていないことを踏まえての感想になります)
様々な理由で刑務所に入っている少年たちが脱獄するという主線や大まかなシーンは踏襲しつつ、台本の視点が明らかに違う。
前回までの少年たちは「少年たちの過去」に大きな軸が置かれていたのに対し、今回は「少年たちの現在」に大きな軸が置かれていたように思う。
「俺はこういう人生を歩んできたから、こんな未来を歩みたい」という独白がメインになっていた前回に比べて、
各々の過去に深い掘り下げがなくても「今何を感じているのか」が中心になることで、
キャラクターたちのセリフの臨場感や息遣いが段違いに良くなっていた。
その構成を可能にしたのが、舞台設定の変更だろう。
《戦争状態の日本》という思い切った設定。
前回まではそれぞれの少年犯罪を背負っていたキャラクターたちが、今回は戦時下でやむを得ず犯した(であろう)罪のために少年刑務所に入れられている。
明らかにウクライナでの戦争などの世界情勢に繋がる、反戦のメッセージを込めた変更だろう。
直近だと中東問題もそうだがメディアをつければ戦時下の模様が否が応でも目に飛び込んできて、私たちの脳裏に染みついている。
そんな一種の共通認識が客席にあるので、各キャラクターの過去を掘り下げなくても、少しのヒントでそれぞれの歩んできた道を少しは私たちの想像で補える。
メッセージ性、構成、どちらにとってもプラスの変更だと思う。
きっと岩本さんは今まで以上に「人間」を深く描きたかったのではないだろうか。
刑務官側の人間性にもスポットを当てており、少年たち同士だけでない人対人のドラマになっていた。
そして主役は勿論美少年なのだが、その周りの非グループのジュニアたちにもきちんとキャラクターを感じることが出来て、本当に隅々に渡って全員が舞台に人間として立っていた。
「舞台に立っているのは人間に決まっているだろう」と言われるかもしれないが、正直芝居になっていないと人形と変わらなく感じることもあるのです…。
ここまで全員の芝居心が高いと思わなかったので、いったい開幕までにどんな稽古を積んだのか見てみたい。
だって本当に去年が「台詞を言う」であれば、今年は「会話をする」ぐらいまでめちゃくちゃレベルアップしてるんだよ。
加えて格段に舞台に必要な声と立ち姿も良くなっている。
全員が底上げした結果、美少年と非グループジュニアのお芝居における格差も少なくなっていて一見横並びのようにも見えて、そこは美少年のメンバーそれぞれの個性や強みを活かした演出になっているので、お芝居として気持ちのいいバランスだった。
特に顕著なのが岩﨑大昇くんを日記の子という狂言回しに置いた点。
大昇くんに歌を集中させることでミュージカルクオリティの安定につながっていた。
人を育てながら舞台としての質を上げるのは難しいと思う。
良くも悪くも「ジャニーズクオリティ」という言葉に守られていたところから、一枚脱皮するにも大変な苦労があっただろう。
桶ダンスが無くても大丈夫。面白いものはちゃんと作れる。
そして以下、ちょっとネタバレだが…
最後の最後に観客の心にひっかき傷をつける演出があるのだが、それが本当に岩本さん上手いなぁと。
あの演出があることで、今私たちが平和の中にいることが当たり前じゃないと思わせてくれるというか…。
平和を享受していると思っている私たちに目を背けるなと言っているような気がした。
明るく楽しいショータイムを挟んでも、終演後まで心に引っかかる部分を作る。
天才か。
世界情勢の今、
お芝居の中の今、
タレントたちの今、
私ならタイトルを「少年たち~NOW~」にするぐらい、奇跡的にすべての今が重なった舞台だった。
追伸。
ちなみに帰りの電車では一緒に行った先輩と二人して「浮所くんすげぇ」とずっと呟いた。
去年までは気づかなかったのだけど、ショータイムの時の彼の輝き方と客席への視線の使い方めちゃくちゃうまい。
「人気あるのわかるわ~」だった。