2019年5月3日。
令和の歌舞伎はじめがまさか滝沢歌舞伎ZEROになるとは、数か月前の自分は思ってもみなかった……
MステでのSixTONESとSnowManのステージにて、ひらりと桜を聞いた瞬間に「これは行かなければ後悔する」と直感してから、本当に行くことになるとは……
様々なご縁が重なりこの度念願かない観劇することが出来ました。まずはこのご縁に感謝いたします。
私は歌舞伎が好きです。
1か月に一度は歌舞伎座やらどこかの劇場に足を運んでいます。
アイドルも好きですが、歌舞伎が好きすぎるゆえに“滝沢歌舞伎”が自分の目にどう映るかずっと不安でした。
そんな、歌舞伎好きで、にわかアイドルヲタで、SnowMan新規の私が【滝沢歌舞伎ZERO】を拝見した感想を、彼らに熱意に敬意を表してしたためさせていただきます。歌舞伎好きの方に、SnowMan好きの方に届けこの思い――
なお、観劇中はメモを取る余裕などないので事象の前後等、記憶があいまいな部分があります。
どこまでがネタバレかわかりませんが、ネタバレがあったらごめんなさい。
【上演前・ロビー】
開場は17:30だったもののその30分前にロビーが解放されており、グッズやお土産の購入が可能でした。
グッズの数が厳選されており舞台写真の枚数も思ったほど多くなかったので、覚悟していたほどの混雑ではなく。
ただ一人当たりに購入する枚数が多いため回転は遅い。売り子さんは大変そう。
あぁ、歌舞伎座の舞台写真さばきのベテラン店員さんを呼んであげたい!
そんな中、年齢層が低く90%以上女性という、普段と違う新橋演舞場の姿にわたしゃずっとびくびくしておりました……
開場すると照明効果でお出迎え。
歌舞伎座では体験できない華やかさですが、そこはスーパー歌舞伎や歌舞伎NEXTで免疫ついているので問題なし。むしろ期待が高まります。
着席し「郷に入っては郷に従えだ!まずは予習だ!」ということで筋書きを開くも、筋が載っていない。
むしろ筋書きというより、充実のインタビューやバックステージトーク掲載でこれはもはや雑誌だ!
私が知っている筋書きとの共通点は「松竹の安孫子副社長の挨拶が載っている」という点ぐらいしかない。
かろうじて場割りが載っていたので、【レビュー+お芝居】という組み立てで歌舞伎より宝塚に近いことは理解。
そんな浅い理解のままぶっつけ本番で舞台の幕が開けた。
【開幕・第一幕】
1.オープニング『ひらりと桜』
私はこの曲を聴きに、この曲のパフォーマンスを見にやってきたといっても過言ではない。
圧巻の桜吹雪は吹雪というより桜の滝だった。桜の爆風が舞台を這う。
降り積もった桜の花びらを随所に利用した振り付けも美しく、効果的な花びらの大きさ・切り方・量…すべてにおいて計算尽くされている。
そして2階席の前方にお立ち台のようなものが用意されており、キャストがそこでパフォーマンスをするという、上のお客も飽きさせない工夫が良い。
時代の幕開けを感じさせる高揚感のある曲に、メンバー・座組一同の熱が加わり、一気に引き込まれた。
なおオペラグラス完備で臨んだが、秒で使用をあきらめました。
理由:目が足りない!
2.挨拶・組曲
岩本氏の座頭としての佇まいが素晴らしい。
そんな彼の挨拶「和のエンターテインメントをお見せする」ということから始まったのが、女性キャストによるバトンやバレエ。
クラシックだかモダンだかダンスに疎い自分にはわからないが、目の前で繰り広げられているのは日本舞踊ではないし和楽器が鳴っているわけでもない。
照明効果も大いに使う。
でも確かに“和”を感じる。
もしかしたらこのちゃんぽんが日本らしさなのかもしれない。
組曲はオープニングから続いて桜が効果的に使われており、それを見て私が思い出したのは『桜の森の満開の下』。
演出に込められた正解がわからないので勝手な解釈になるけれど、私には美しさと恐ろしさの中で苦悩する若者たちの姿に見えた。
3.殺陣(モノクロ)・変面
先進的な光の演出の中で、身一つを使った役者の奮闘が光る。
組曲から殺陣までのデジタルとアナログの融合にイメージとして近いと感じたのは、外国人に人気のロボットレストラン。
外国人がクールで日本らしいと感じる要素が詰め込まれているような気がした。
宮舘氏が一人抜けて殺陣が上手い。剣さばきに重みがある。
三人同時戸板倒しも見れる。
変面に関しては仕組みがわからない。
変面は中国の文化であり、しかし衣装は中東のような、シルクロードのどこかなのかと想像できる世界観でした。
4.Maybe/バラード『My Friend』
お歌ゾーン突入。
Maybeは深澤氏・阿部氏が歌い、佐久間氏とラウール氏が踊ります。
ラウールのダンスうまっ。
生き生き踊っている少年を見るだけで心がいっぱいになる…
時折見せた笑みに枯れた母性が刺激される……
佐久間くんとの光と影のコントラストがパフォーマンスに奥行きを生み出していました。
My Friendは渡辺氏が歌い、宮舘氏がアクロバットなパフォーマンスをこなしていました。
歌えて踊れて殺陣出来て…宮舘くんは何でも器用にできる子なのでしょうか。
5.太鼓
腹筋太鼓キタ!Ride on timeで見たやつや!
下で叩いている太鼓はキャストによる移動可能のキャスター付きのようで、演奏中はキャスターを固定して叩いているようにお見受けしました。
固定するとはいえ、無理な体勢で力いっぱい叩くとなるとかなり不安定な気が。
上で回っている三人も大変ですが、下の演者もかなり大変だと思います。
二階の小さなお立ち台の上でも太鼓を叩いているのですが、あそこも絶対怖いはずです。
6.DANCE『Make It Hot』/滝沢一座「時の架け橋」
Make It Hotは自分たちの本業だといわんばかりの全力ダンスがキレッキレ。
見ていて気持ちがいい。
衣装も明るくダンスが映える。
7.滝沢歌舞伎 五右衛門ZERO/桜の舞/総踊り
ここでようやく和のエンターテインメントのひとつとして“歌舞伎”登場。
演目前に9人が舞台上で化粧を見せてくれるのですが、場をつなぐために番頭として演目の説明をしてくれているジュニアの林くんの声が良い。
義経弁慶の五條大橋の一場面を演じてくれるのですが、台詞回しも抜群にうまい。
『五右衛門ZERO』は五右衛門演じる岩本くんが、五右衛門の風格を見事に体現できてました。
全体的に立廻りのテンポが速いので、もう少し古典のテンポに近づけても面白かったかも。
せっかく普段歌舞伎を見ないお客さんが多いからこそ、もっともっと本家の歌舞伎に近づけて挑んでみてもいいと思うのです。
例えばトンボ(前転宙返り)もジュニアの中で出来るが子いればチャレンジしてほしい。
全員本職ではないのでまだまだ重心が高いのもしょうがないし、むしろそれで良い。
地方の地歌舞伎と同様、プロではない人間が本歌舞伎に挑んでどこまでできるかが見たいです。
『桜の舞』は二人椀久のオマージュか。
これは佐久間くんの女形がすごすぎた。
もう少し日舞の勉強したら普通に歌舞伎座の舞台で踊っててもおかしくない程の出来。
唯一の欠点は顔が小さすぎることぐらい!(舞台役者はあまりに小顔だと映えない
桜の舞も素晴らしいですが、その流れで総踊りに行くんですけど、その総踊りでの身のこなしが素晴らしい。
ひとりだけ抜きんでてものにしておりました。
いや、ほんとすごいよ。ほんとすごい。(大事なことなので二度言います
【第二幕】
満月に散る鼠小僧~望んでいたのは笑いあり、涙なし~
休憩挟んで第二幕はお芝居パート。
正直、これは筋書きにあらすじ書いておいてほしかった……
台詞回しも現代なので物語は理解はできるのですが、おそらく前回の滝沢歌舞伎からの続きのお話らしくキャラクターがわからない……
そのあたりだけでも補足しておいていただけると、ついでに配役も教えていただけると、初心者としては大変ありがたいのですが。
そんな要望も抱えつつも、「コメディーお江戸でござる」のような雰囲気あり、大掛かりな大立廻りありでとても楽しかったです。
9tの水を使った大立廻りはさすがの迫力。
下から噴水のように吹き上がる効果もありましたが、個人的には滝だったら上から大量に落としてほしいところ。ワンピース歌舞伎の水を使った大立廻りのような感じで。
最後の幕切れは、タッキーからのバトンタッチを感じる演出でした。
カーテンコール『WITH LOVE』
水の大立廻りからのカーテンコールの風景が圧巻でした。
水の処理もあるしこの大掛かりなセットからの転換どうするのかと思っていたら、こうきたか!!
これは劇場で見てほしい。
水鏡に映る桜の美しさたるや。
ここで手話を取り入れた愛の歌をみんなが歌うのです。
泣くじゃん!
この演出は憎い!
【総評】
各キャストについて
岩本照
座長の貫禄が素晴らしい。
五右衛門の大きさも合っているので、滝沢歌舞伎で次はどんな演目を演じてもらいたいかと想像が膨らみます。
彼みたいな存在がいてくれるから、歌舞伎ファンとしてはむちゃくちゃ真正面から歌舞伎に挑んでほしいと思うのです。
深澤辰哉
鼠小僧ではコメディアンとしての要素が強いですが、台詞回しも上手い。
その上手さを感じさせない上手さがある。
実はそれが一番難しく、高度なことをやっている。
渡辺翔太
「芝居が上手いやつは歌が上手い。歌が上手いやつは芝居が上手い」は定石だなと。
桜の舞では女形が二人いるのでどうしてもそちらに目が行ってしまうけれども、もう少し見せ場を作ってあげてもよかったのに。二人椀久だと遊女の幻を追う男の表情が見どころなので。
あと初見でも彼の踊りには『渡辺翔太らしさ』というものが見えて、自分を強く持っている人なんだなと想像。
宮舘涼太
殺陣が一人抜けて上手い。
その上にフライングもこなす。
歌も上手いし、今回拝見してメンバーの中で一番のオールラウンダーの印象。
佐久間大介
とにかく女形が衝撃的だった。
また声もよく通り、芝居勘も良さそうなので、今すぐセリフ量が膨大な外国演劇をやってください。お願いします。絶対合う。
外部の舞台に挑戦しまくってほしい。
阿部亮平
彼の殺陣もよかった。
水×着ぐるみは想像以上に重労働だと思う。下手したら水没しそう。
彼がワンワンするたびに「くっそぉ、かわいいなぁ…」と何かを噛みしめている自分がいた。
目黒蓮
変面の演技が終わった後、どこぞの王子かと思った。
このままシャンシャン持たせて宝塚の舞台に立ってもらいたい……
あと今回の鼠小僧では少々クールな敵役でしたが、個人的にはコメディ的な芝居が上手いと予想。
向井康二
鼠小僧では一番無理なく演じていたように思います。
演技も上手いし、最後の『WITH LOVE』では歌も上手いことが分かった。
少しハスキーな歌声に色気がある。
あと白塗りも似合っていました。
ラウール
とにかくダンスが好きなことが伝わってくる踊りを踊る子。
鼠小僧では無理して低い声を出さず、少年らしさをもっと出しても良かった。
時折地声に近くなった時に少年の揺れる気持ちが表現できていたので、もう少し自然体で演じることが出来ればどんどん伸びる。
腹筋太鼓も頑張っていました。
ただ、まだ15歳なので筋肉を痛めないように。
焦らなくていいよ。未来は明るい。
母性本能をくすぐられ、唯一、思わずソロ舞台写真を買ってしまいました。
滝沢歌舞伎は歌舞伎なのか
昔、松竹のお偉いさんのトークショーを聞きに行った際、そのお偉いさんは「滝沢歌舞伎が歌舞伎と思われちゃ困る」と仰られていました。
滝沢歌舞伎ははたして歌舞伎と言えるのかどうか、これは多くの歌舞伎ファンの中で長いこと議論されてきたことだと思います。
私は今まで滝沢歌舞伎への批判の気持ちを持ったことは一度もありませんが、ただ歌舞伎としてどのくらい成立しているものなのか純粋な疑問はずっと持ち続けていました。
今回拝見して、オープニングからカーテンコールまで全てが歌舞伎かと問われたら、答えは否です。明らかにレビュー+お芝居だから。
ですが筋書きをちゃんと見ると、“歌舞伎”と銘打っているのは一幕目最後の滝沢歌舞伎のみなんですよね。
【滝沢歌舞伎ZERO】という冠はあるものの、タッキー自身が歌舞伎だと言っているのはそこのみ。
まずそこが大前提としてあること、誤解しちゃいけないなと思いました。
では“歌舞伎”と銘打たれた『五右衛門ZERO』と『桜の舞』は歌舞伎なのか。
私は立派な歌舞伎だと思いました。
技術はないし、大歌舞伎とはレベルも違う。
けれどもかつては遊女歌舞伎や若衆歌舞伎が存在し、今でも地歌舞伎が盛んな地域もあるという歌舞伎の歴史を考えれば、これもひとつの歌舞伎の立派な形です。
そして一定層のファンを獲得している今では、もう間違いなく「滝沢歌舞伎は歌舞伎かどうか」を論じる段階ではなく、「滝沢歌舞伎の芝居はどうか」と芝居の中身について語る段階にいます。
これからの彼らの進歩が楽しみでなりません。
むしろ大歌舞伎には見習ってほしい点も
グッズ収益が違うから単純比較出来ませんけど、このチケット設定は若年層を取り込む一つの目安になると思うんですよね……
ただいま梨園はイケメンパラダイス状態で、絶対若いファンを取り込むチャンスだと思っています。
ワンピース歌舞伎やNARUTO歌舞伎など入り口も広がっている今、あとは劇場にどれだけ足を運んでもらえるかです。
S席12,000円というチケット価格が松竹に一石を投じるものであってほしい。
SnowManファンの方には、是非「歌舞伎 イケメン」で検索してみていただきたい!
そして興味のある俳優さんを見つけたら是非歌舞伎に足を運んでいただきたいです。
歌舞伎座には短時間格安のお席もあるので、是非是非これを機に~!
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七之助さんや仁左衛門さん玉三郎さんが並ぶ舞台写真ファイルの中に、SnowManが並ぶ日が来るとは……
人生って不思議なものですね。