『流星の音色』観劇記~ミュージカル俳優・京本大我の行く道を応援したい~
《南座公演に行ったため赤字にて追記アリ 9/4》
京本大我さん主演のオリジナルミュージカル『流星の音色』を見てまいりました。
京本さんファンとしてはミュージカルの仕事が決まったということがとても嬉しく、
舞台ファンとしては「製作:松竹、演出:滝沢さん」というと頭に浮かぶのは『少年たち』で、はたして今の京本さんに見合う舞台になるのかと不安あり。
色んなドキドキを抱えて新橋演舞場へ向かったわけですが…
期待以上と不安的中の両面を感じた舞台でした。
ストーリーとしては「七夕の日に二つの国の王子と王女が会う話」という至ってシンプルなお話。
以下、ネタバレ回避のため舞台を俯瞰で見た私の印象を記すと…
一幕目は「ここは新橋演舞場?私は日生劇場のファミリーミュージカルを見に来ているのだろうか」というイメージ。
キラキラしたおとぎ話のような少年と少女の恋物語は、新橋演舞場より俄然日生劇場に持って行った方が映えると思ったのです。
しかし一転、二幕目になると「どどどうした!銀英伝でも始まるのかな!?」となって後、
一瞬「マリー・アントワネットを思い出す…」になって、また日生劇場に戻ります。
あんたは新橋演舞場で何を見てきたんだと思われるかもしれないけど、そんな感じの舞台でした。そんな流れがちょっと面白かった。
シンプルなお話と言った通り、シンプルな題材が悪いわけでは全くないのですが、
物語に少し物足りなさはあります。
個々のお芝居が素晴らしい分、そこが結構気になってしまいました。
ミュージカルはお芝居×歌の総合芸術ですが、核となる物語に太い芯がないとふわふわとしたものになってしまうと思うんです。
この舞台がストーリーを魅せたいのか、歌を聞かせたいのか、演出を魅せたいのかわかりませんが、
【舞台の重厚感】が物足りなかったように思います。
まさに「製作:松竹、演出:滝沢さん」と聞いた時によぎった不安な部分がこれでして、やっぱりなというのが正直なところ。
あっ、照明はさすがジャニーズ。綺麗でした。
期待以上に良かったところもあります。
まず生オケ。
客席に入った瞬間に楽器の音が聞こえてきて「よかった!生オケだ!」と安堵。めっちゃガッツポーズしました。(生オケなんて当たり前、ハードル低すぎって言わないで!)
そして女性陣の歌が素晴らしすぎる。
真彩希帆さんと新妻聖子さんの歌とお芝居がむっちゃくちゃ良いです。
なんで宝塚の娘役さんってこんなに可愛いんだろう…。
真彩さんだけでなく宝塚の娘役さんは、全世界を上げて保護すべきだと思う…。
可愛くて上手くて、ちょっとダサいプリンセスの衣装も着せ替え人形のように着こなすし最高。
新妻聖子さんはレベチです。
恥ずかしながらテレビで歌声を拝聴したことはありますが、生は初めてでして、
失礼ながら「歌は上手いけどお芝居はどうなんだろう」と疑っておりました。
大変申し訳ございませんでした!(五体投地の土下座)
上手いだけじゃなかった。
新妻さんが歌った瞬間、空間が新橋演舞場から帝国劇場にワープしました。
お芝居もとっても素敵で、なんというか…新橋演舞場で歌ってもらっていい女優さんではない。
贅沢すぎます。
初見のミュージカルではどこで拍手をするかも難しいものですが、中盤以降は女性陣の歌に関しては自然と拍手が起こっていたのが印象的です。楽曲の切れの良さもあるかもしれませんけど。
ジャニーズからは松尾くん。
彼のお芝居がとても良いですね。
バレエを軸としたダンスも綺麗で、もしダンス・ダンス・ダンスールが舞台化なんてことになったらオーディションを受けに行くといいと思います。
《南座追記》
上から拝見したのだが、外向きの爪先がバレエのそれでとても綺麗でした。
立ち姿も美しいのですが、特に片膝立ちシーンの爪先の角度に「この子の身体にどれだけバレエが染みついているんだろう」と驚きました。
また台詞が滑らないのが素晴らしい。
林君や寺西君のような俳優組としてやっていける逸材だと感じました。
そしてもう一つよかったのが、ファンマナー。
さすがにロビーに出ると少々にぎやかな方もいらっしゃいましたが、客席の静かさは想像していた以上でした。
大きな拍手でキャストをねぎらいつつ、アナウンスがかかったら素直に拍手辞めて帰り支度。
普段からお芝居を見慣れている方が多いのかな?
中身の話に戻りますが、歌の部分で惜しいと思ったのが、
全体的に京本さんもそうですし、歌・お芝居含め全体的にキーの高さが目立ったので、
ひとりふたり、歌でも芝居でも低音を響かせられる俳優さんを置いたらミュージカルとして締まるのではと感じました。
歌の面ではもう一つ、とても残念なところがありまして。
それは、新妻聖子さんが演じる女王と、かつて関係のあった内海さん演じる国王のデュエットがなかったこと。
お話の流れ的に、この二人が再会したら絶対にデュエットがあるものだと思っていたし、絶対にあった方がいい演出だと思うのですが、何故なかった!
内海さん、他のシーンでは歌っていたのに…
申し訳ないけど「だったら新妻さんとデュエット出来るレベルの俳優さん連れてこいや!」と、ここはちょっと残念過ぎました。
そしてもう一つ残念だったのが、最後にある本水の演出。
少々過剰です。
終盤にして京本さんと真彩さんの面と向かっての初デュエット。
歌が聞きたいのに…肝心の歌に対してちょっと邪魔だなぁと思ってしまいました。
物語に合っていたので水の演出自体は素敵だったのですが、
水の勢いがレベル中~レベル大~レベル特大まであるとすると、「いやいや、まだ中でいい!大になるの早いって!」という感じで、おそらく舞台に近い席ほどこの現象は顕著なのでは。
本水演出がジャニーズのお家芸だとしても、もう少し歌を中心とした緩急をつけてもよかったのに…と思いました。
幕切れの水の演出はとても綺麗でしたよ!
《南座追記》
舞台に近いほどと書きましたが、上の方から見た方が水うるさかった…
新橋で見た時より京本さんと真彩さんとのデュエットが良いパワーバランスで素晴らしかったので、なおさら水が気になって…
長谷川一夫先生がご存命で演出されてたら「役者なんだからお客さんに顔みせぇ!」って言われてたと思うw
本当にジャニーズの照明は最高にかっこいいんですけど、他部分がミュージカルとしては残念に感じてしまう。
でも演出として新橋演舞場と同様良かったのが『花道を使わなかったこと』。
ジャニーズってライブ基準で考えていらっしゃるからか、「えっこの席もS席なの!?」というような、演劇専用劇場で演劇を見たとこないのかと思う価格設定をしてくるじゃないですか。
個人的には松竹の劇場で花道を使ったら、1階と2階が同価格っていうのはあり得ない事なんです。
しかし流星の音色は花道を一度も使わなかった。
ジャニーズの松竹主催舞台で初めて、座席の価格設定に納得できた舞台でした。
さて本題というか、座長・京本さんについて語りたいです。
まずこれから観劇される方にアドバイスとしては、ニュージーズのことはいったん忘れましょう。
ニュージーズの京本大我を頭に残したまま見始めると、役柄のギャップに混乱するので、チャンネルを切り替えて見ることをオススメします。
今回の役どころが少年と青年の間のような役どころで、ハイトーンボイスを活かした歌声や、繊細なお芝居は健在。
人間的な弱さや細さを描きつつ、地には揺らぐことのない王族の権威を備えている。
この揺らぐことのない気品は、本当に天賦の才です。
演技の範疇では表せない、嘘のない持って生まれた、替えの利かない京本さんの大きな武器だと再確認。
そしてプラスの意味で、もう少年役はこれで見納めかもしれないとも感じました。
もちろん今後も一幕のスポット的な少年期であれば演じられると思います。
ただSixTONESという大男集団の中で華奢なイメージもある京本さんですが、単体で立たれたらとても大きいし厚い。
オーラも身体的にも京本さんに厚み=貫禄があるのです。
(ニュージーズを経てこの厚みを得たと考えると、その進化がしみじみ嬉しい)
京本さんの中性的な顔立ちやハイトーンボイスを活かすなら、今回のお役やそれこそルドルフのようなお役を宛がいたくなりますが、もうそのイメージからの卒業の時だと感じました。
二幕のとあるシーンで、強さと繊細さがせめぎ合う描写があるのですが、
そこは正に今までの京本大我の舞台人生で培った表現がギュッと詰まっているように感じて、多分全京本さんファンが好きなシーンだと思います。
そしてそのシーンを見た時に「うん、次のステップに行こう」と思う人は多いのではないでしょうか。
そして流星の音色での京本さんの役割が主演以外にもう一つ。
流星の音色は多くの楽曲の制作に京本さん自身が関わっています。
オリジナルミュージカルで比較対象がない上に、
そもそも京本さんの作る音楽で京本さんが歌うのですから、京本さんの表現が全て正解だと思うので、見事・素敵だったとしか言いようがありません。
実際、見事で素敵でした。
ただ私は他人が作った音楽に自身の幅を超えて挑んでいくという姿に美しさを感じる人間なので、
もっともっと高いハードルを設定しても超えられたのでは…とは感じています。
この流星の音色の上演が決まったのは、「舞台をやりたい」という京本さんの相談に滝沢さんが答えたという経緯があるそうです。
柔軟にスピード感を持ってステージを用意できるというのは、さすがジャニーズ。
ジャニーズって一度舞台を作ると、それを毎年とか何度も上演するじゃないですか。
流星の音色も今後、再演はあるのでしょうか?
再演があれば、どのようにブラッシュアップされていくかが楽しみですし、一度見た身としては拍手のタイミングも任せてください。
でも先述の通り京本さんも長くは演じられないお役だと思うので、早いうちに他のジャニーズに継承されていくのかな…。
何が言いたいかというと。
わたくし、京本さんやスタッフの皆さんが苦悩の末に生み出したこのステージを無下にはしないで欲しいという気持ちもありつつ、このステージに縛られすぎないで欲しいという気持ちがせめぎ合うという大変複雑な感情を抱えております。
外部に目を向ければ京本さんが目標にしている山や、ファンが見たいと思っている山が沢山あります。
今回中止となり見れなかった方々へ届けるということはどこかのタイミングで必要だと思いますし、時々で興行的な判断も必要だと思います。
しかし、もしなにかを選び取る必要が出てきたとき、事務所の都合より「京本さんの判断」が尊重されることを切に祈ります。
京本さんが選んだ道ならファンは応援するのみですので。
あーあ、真彩希帆さんがロザリーで、京本さんがオスカルで、ベルばらやらないかな~。
京本さん、共演歴から見てもほぼ雪組の人じゃないですか。
もうベルばらやろう。
《南座追記》
京本さんって実際はそこまで喉が強くはないんでしたっけ?
新橋の時の方が声が硬かったかなと感じたのですが、今回は硬さが感じられず、それが功を奏したのか南座の声の方が落ち着いて歌が届いている気がしました。
回を重ねるごとに身体に馴染んでいったということもあるかもしれませんが。
二幕の強い歌声や芝居もドスを利かせようという力みがなく、自然の深みを感じられました。
そして真彩さんとのデュエットが本当にバランスよく素晴らしいものになっていました!
新橋の感想では正直この舞台に固執することなく次の大きなステップを期待すると書いたのですが、
私自身2回目ということでこの舞台に関しての理解度が上がっていたということもあったかもしれないけど、
南座の完成度を見て、恐ろしいことにまた再演も見たいと思っている自分がいます。
演出面や本の面でかなり大きなブラッシュアップは必要だと思うし、外部の演出家を招聘して改編もいいんじゃないかなとは感じていますけどね。
こうやって見る毎に新たな発見をさせてくれるって舞台の醍醐味ですよね。
ちゃんと舞台の醍醐味を味わわせてくれた京本さんやチームに感謝です。
<以下、物語の結末に一言叫びたい>
<特大ネタバレなので、これから観劇の方は回れ右>
いや、お前だけ消えるんかい!
リーパは竜の血筋だから消えなかったということだと思うのですが、やっぱりなんとも…。
実際だったら国際問題よ。
この後、姫の弔い合戦になりませんようにと願わずにはいられません。