春の踊りはよーいやさー。
今年も滝沢歌舞伎の季節がやってきました。
一介の歌舞伎ヲタク(別名・松竹の犬)が、滝沢歌舞伎ZEROでSnow Manにハマり、今では立派なファンになり果て、2022年も滝沢歌舞伎で春の訪れを感じるようになりました。
Snow Manファンとして心躍らせつつ、そして歌舞伎ファンとして冷静な心を持って、今年も新橋演舞場へ足を運びました。
今回の滝沢歌舞伎ZERO2022は、過去の滝沢歌舞伎ZEROと比べても、
【Snow Manファンの目線】で見た時と、
【歌舞伎をはじめとする日本文化ファンの目線】で見た時で、
かなりのギャップを持つ舞台だと思いました。
※2回目の観劇を終え、私の認識不足だったと思ったところや、再発見したことを追記しました(以下、赤字は5/16追記)
Snow Manファンとしての目線
大変満足感が高かったです。
まず、今年は全体的に大きなリニューアルを加えてきたというのが、第一印象。
滝沢さんが作り上げた滝沢歌舞伎という土台は継承しつつ、Snow Man色を強く前面に打ち出してきたなと。
今までは「滝沢歌舞伎の継承」が大きなテーマで、そこに挑む9人が見どころといった感じでしたが、今回ようやくSnow Manが主役の滝沢歌舞伎が固まってきと感じました。
Snow Man自身も4年目となり、芝居やパフォーマンスのテンポの良さから、ガムシャラさだけではない精神的余裕が伝わってきます。
またローラースケートが投入されたり、ひとつひとつの演目の魅せ方をとっても、海外公演や大箱公演を見据えた演出に変更されているように感じます。
第一部は、彼らのダンス・パフォーマンス力が余すところなく堪能できます。
新曲も肩ひじ張りすぎない、今のSnow Manだからこそ映える楽曲でした。
第二部の鼠小僧は、お話のバランス的にもう少し官兵衛たちの残虐さを見せても良かったかなとも思いましたが、それでもまとまっていて、今の鼠小僧の完成形を見れたと思います。
逆に言うと、5年目を一区切りぐらいで現状のニ代目鼠小僧継承物語から一歩進めてもいいかもしれません。
Snow Manがあと何年滝沢歌舞伎に立ち続けるかわかりませんが、
Snow Manの次を担う子たちがどんなお話を作ればいいのかわからなくないですか?
(鼠小僧継承物語の継承?)
歌舞伎ファンとしての目線
正直【和のエンターテインメント】と銘打つ割りに、和の要素が少なくなった印象を受けました。
ダンスだったりアクロバット浮遊だったり殺陣だったり、全体的な演目配分はそこまで大きく変わっていないと思うので、おそらく歌舞伎パートの変更が大きな要因ではないかと。
以前であれば舞踊&五右衛門を2チームに分かれての披露の後に、総踊りでしたが、
今回は9人全員出演の演目を2本という構成。
大海原を背景に大捕物が組み込まれた『海』という演目と、連獅子モチーフの毛振りが織り込まれた『花鳥風月』です。
まず驚いたのが、歌舞伎パート前に番頭さんより「今回の歌舞伎には筋がなくお客さん自身の解釈で」と案内があったこと。
いやいやいや、それって演じ手的にも観客的にもかなりハードルが高いと思うんですけど!
『海』に関しては浄瑠璃などの唄もなし。
日本舞踊のプロが踊るのであれば唄なしでも背景が見えるかもしれないけど、
そうでないと筋なし唄なしはきついかも…。
おそらく大歌舞伎や日本舞踊を見慣れた人間の方が戸惑うかもしれません。
観客をある程度一定の方向に誘導してあげることも親切だと思います。
そうそう、俊寛好きの自分は海のセットを見て「おっ俊寛!」とちょっとテンションが上がりました。
そして『花鳥風月』。
「連獅子をモチーフにした毛振りを織り込んだ舞踊」を花鳥風月というJPOPをバックに踊ります。
まぁモチーフだから…あくまでモチーフだから……ですけど、
連獅子という名前を持ち出すのであれば、連獅子単体で披露すべきだったと思うのです。
例えば、
連獅子の前シテは番頭さんの説明で済ませ(本当は連獅子は前シテこそ面白い)、
後シテのみ1,2人で大歌舞伎の連獅子になるべく近い形で披露し、
その後全員で花鳥風月で総踊り、
にしてみては。
岩本さん、宮舘さんあたりであれば連獅子にチャレンジできるポテンシャルはあるはずです。
毛振りだけが連獅子ではないし、毛振りだけ引っこ抜いてやるっていうのは連獅子の面白さを他に置いてきたと言っても過言ではないぐらい、大変勿体ない。
また連獅子の音楽が洋な分、結果的に第一部全体で和の要素が引かれたように見えてしまっていました。
【海⇒連獅子⇒花鳥風月で総踊り】にすれば和成分を間引くことなく出来たのではと思いました。
おそらく海外や大箱での公演前提で、お芝居成分を少なくしぱっと見の鮮やかさで目を引く演出にしたのでしょうが、
それはそれ、これはこれで、
そうそう、毛振り自体は体格的な得意不得意あれど、初日のワイドショーに比べたらそんなに危うさ感じなかったかな。
きっとメンバーも多忙な日々でお稽古の時間を取ることも一苦労でしょうに、さすがの対応能力です。
対応能力に秀でた彼らだからこそもっと出来ると期待してしまうのですが。
滝沢歌舞伎は大歌舞伎とは別の、ひとつの地歌舞伎としてこれからも続いていくでしょう。
歴史が続いていくからこそ今はまだ勇み足にならず、丁寧に大歌舞伎に挑むという軸足は動かさずにいてほしいのです。
型があるから型破り、型がなければ形無し。
一朝一夕に身につくものではないけれど、きっと挑み磨き続ける姿勢こそが滝沢歌舞伎。
大味に惑わされずに、一歩一歩踏み固めながら技を磨いていくことが、きっと滝沢歌舞伎の未来に結びついていくと思います。
やんややんや外野が騒がせていただきましたが、
改めてSnow Manのポテンシャルの高さを再確認できましたし、
彼らの持つ輝きに普段穢れた下界に住まうアラサーは浄化されました。
最後に、各キャスト毎に気になったところをメモ。
各キャストについて
- 岩本照
9人で立つときも、一人で立つときも、ぶれない凛とした芯が素晴らしい。
これは他メンバーへのマイナス評価でも何でもなく、ただの好奇心的な感想として聞いてほしいんですけど、
一度、主演岩本照の滝沢歌舞伎が見てみたい。
ただ腹筋太鼓ではあまりに涼しい顔しているので、彼だけ特別メニューを課すといいでしょう。
いつか蘭平物狂のような梯子乗りやってほしいな…
- 深澤辰哉
褒めたい。
私が観劇した日は、見入るタイプのお客さんが多かったらしく、おそらく客席がリアクションを取ることに少し躊躇していた気がするのですが…
それを解したのが深澤さん。
化粧の時とお丸の時に、客席の空気を引っ張り上げました。
本当にこういう役割って難しくてね、大仕事をやり遂げた深澤さんに大きな拍手を送ります。
- ラウール
こんなに柔らかなパフォーマンスをする子だった!?
パフォーマンスだけでなく表情にまで柔らかさが出てきていて、人としての深みが増した気がします。
また以蔵のお芝居も地声に落ち着いてきて、無理なく耳に入ります。
思春期に少年から大人に変わる~♪と、壊れかけのRadioを地で行くような存在です。
あとあまりの足の長さに、腹筋太鼓では深刻な足余りが発生しております。
そうそう風を吹かせた演出部に金一封を差し上げたい。
さらに以蔵のお芝居が良くなっていて衝撃。
前回の独白シーンでは台詞が歌いそうになってしまうところを、今回は見事な芝居でした。
声の置き方も素晴らしかった。
あとWITH LOVE衣装で髪が長いラウールくんはベルばらのアンドレでした。
- 渡辺翔太
いや、エンドやん。
ほぼエンドやん。
あれか、エンドは渡辺さんで、渡辺さんは銀さんだから、エンドは銀さんなのか(混沌)
自然体が彼の一番の魅力だというのがよくわかります。
花道に腰掛けるラウールさんと、花道に寝転がる渡辺さんのサイズ感の違いが面白かったです。
お客さんが自分に求めていることとか、自分が一番魅力的に見える姿をとても理解している人だと思う。
「かわいい」が売れる武器だとちゃんと理解している人だと改めて思いました。
私が見た回は髪型がしっとりさらさらしていて、一瞬誰だかわからずに「ジュニアの子かな~」と思ってしまいました。
あと多分阿部さんだと思うんだけど(化粧で確信が持てない)、毛振りが上手いです。
前回殺陣も上手かったイメージがあるので、体幹がしっかりしているのだと思います。
二部でのびのびお芝居している様子は、いちいちかわいい。
毛振り上手いのやっぱり阿部さんでした。
クライマックスに向けて回すスピードを上げていく中でも、おそらく習ったことに忠実に毛を振っていたと思います。
またその手前の海でも型が綺麗だったので、おそらく器用ではないかもしれないけど、習ったことをきちんと反復できる人だと思います。
褒めたいそのニ。
ひらりと桜からずっと表情が素晴らしかった!
舞台に立つ人間としての意識が表情にまで現れていたと思います。
また歌舞伎パートでの下半身が素晴らしい。
飛び方と引っ込むときの走り方がとても歌舞伎で、研究熱心さが伝わってきました。
各所で鍛えられたからか、とてもバラエティの芝居が上手い。
1年目より2年目、2年目より3年目…今が一番お芝居のびのびしていて素敵です。
外部の舞台に出てほしいですね。
お芝居が抜群に上手くなっていました!
前回まではまだまだ半兵衛のキャラクターに隙間があると感じていましたが、
今回はちょうど半兵衛のキャラクターの枠に目黒さんがガチっとハマったというか…
見ていてすごく気持ち良い半兵衛です。
周りのお芝居とのバランスもめちゃくちゃ良くなってて、驚きました。
パフォ―マスから精神的余裕を大いに感じました。
でもそれと一緒に彼の優しさが出てしまったかも。
もっと前に出ていい。もっとガツガツしていいよ。
演出部の皆さん、黒影組の残虐さが出るシーンを入れれば、もっと彼の良さが出るし、お芝居としての奥行も出ると思います。
反省。私、なにもわかってなかったです。
舞台はナマもの。
各メンバー、自分の中で毎回いろんな課題を立てて臨んでいることと思います。
おそらく向井さんは、その中でも特に幅をつけてお芝居を楽しんでいるんじゃないでしょうか。
前回は目に見えて違った官兵衛を見せてくれていて、「演技が上手い人の神々の遊び」みたいなことしてるなと感心してしまいました。
つくづくアクロバット出来てダンス踊れて運動神経悪いのが不思議。
宮舘さんに続き、こんなに空中曲芸出来る人間が、同じグループに二人もいるジャニーズの層の厚さってすごいですね。
女方で花道から出てくるとき、お茶汲み人形かと思うぐらい顔小さくてかわいかったです。
提案なんですけど、和の要素を補完するためにも、佐久間さんは『操り三番叟』にチャレンジしてみてはいかがでしょうか(人形遣いは阿部さんで)。
- IMPACTors
相変わらず佐藤新くんは虎者といい単独行動させられがちである。
目黒さんデザインの衣装を纏った影山くんはウルトラマンの防衛隊に居そう。
前回より何十倍もパフォーマンスに自信が漲っていて、グループとして大きくなったと感じました。
そしてなにより、お疲れ様です。
めっちゃ働きます。休みなく働きます。本当にお疲れ様です。
2回目見てもやっぱりめちゃくちゃ動いてた。本当にお疲れ様です。
和要素の補完という点では、義経弁慶の五條大橋を復活させてもいいかもしれないですね。
林翔太さんの『時の架け橋』が衝撃だったので、あのレベルで番頭も務められて歌える子が出てくれば!
あっでも今義経やると、鎌倉殿のバーサーカー義経の印象が強すぎるか~…
和の要素が少なくなったという印象について、もう一つ。
九剣士あらため三剣士?
あのパートが「殺陣×歌」の演目になったことも一つ大きいかなと感じました。
個人的には人数減らしても良いとは思うのですが、歌わない方が殺陣の緊張感や、日本の殺陣らしさは表現できるのかなと思います。
加えて照明を使った演出が豊富だったので、そうなると日本の殺陣の印象とは離れていってしまう気がします。
もしくは「殺陣×歌」を軸に置くのであれば、パフォーマンスの最後の方に音楽を絞って、『戸板倒し』を復活させてはいかがでしょうか。
ギュッと空気が絞まるような演出が加わると、序盤から和の要素を濃く感じることのできる演目になると思いました。