ひのきのぼうの沼日記

そう、人生は沼だらけ

明治座四月花形歌舞伎 浮かれ心中/二人椀久

観劇日記と化したのに、超放置していたこのブログ。

久々の更新ということは…
久々の舞台、久々の歌舞伎、でございます!

気づけば今年初歌舞伎だったりするΣ(゚д゚;)

なぜ、足が遠のいていたかというと…まぁ、色々個人的にもあったんですけど…
間違いなく大きな理由は『中村屋兄弟、外部仕事で歌舞伎不在』ってことですね!
CHIKAMATSUとか真田十勇士の映画撮影とかでお忙しかったから!
アイドルグループの推しメンが不在で公演に出れてないみたいな感じです。
あと、ぶっちゃけ見たい演目が少なかった……
1月の国立の沖津白浪は見たかったけど………

特に今年に入ってからは個人的に結構古典作品が並んでいた気がするんですよね。
正直、長時間古典拘束は、歌舞伎初心者にはきついものがあるのも事実。
そんな中、四月花形歌舞伎は、重い作品もありつつ、見やすい演目が並んでいる気がします。
気軽に足を運びやすい演目揃いです。

気軽に足を運びやすい演目なうえ、菊之助勘九郎七之助という三枚看板が揃ったわけだから、チケットは取りにくかったけどね!

てなわけで、久々の歌舞伎は、初上陸明治座です。
結構傾斜があり、三階席正面でしたが、舞台との距離はそこまで遠くなかったと思います。


明治座四月花形歌舞伎の夜の部の演目は、『浮かれ心中』と『二人椀久』です。

【浮かれ心中】

『浮かれ心中』は井上ひさし作ということで、楽しいですね。
井上ひさしの喜劇は軽快で、でも太い芯が通っていて、舞台が一気に華やかになる明るさがあります。

人を楽しませることが大好きな栄次郎が売れっ子戯作者になろうと、話題作りの為様々な茶番を繰り返す作品。
主人公の栄次郎に勘九郎さん、妻・おすずに菊之助さんです。

まず勘九郎さんはこういう喜劇はほんとうにお上手で、祇園恋づくしとか狐狸狐狸ばなしとか、町人の人情が似合います。
フットワークの軽さが魅力ですね。
対して、菊之助さんはさすがの安定感。
演技も佇まいも存在感も安定感があるからこそ、お茶目な言動や可愛らしさが引き立ちます。
とっても可愛らしい夫婦です。
他にも女方に梅枝丈・新悟丈が並び、個人的には女方の可愛らしさ満載の最高の布陣です。
脇役も演技が確かな方々で、栄次郎の友達・太助を演じた亀三郎さん、お役人役の亀蔵さんが特にお気に入りです。
声が良いし、亀蔵さんの出番は少ないですが、その中にもキャラクターの個性が濃く見えて最高でした。

浮かれ心中の最大の見どころは間違いなく「中村勘九郎ちゅう乗り相勤め申し候」ですね!
宙乗りじゃなくて、ちゅう乗り表記なところがミソです。
三階席でしたが運よく丁度ちゅう乗りの延長線上のお席で、勘九郎さんの近さに歓喜でした(*´∇`*)
明治座って天井がガコンって降りてきて、そこに宙乗りを収納する作りになってるんですね。
明治座ハイテクw(*゚o゚*)w

笑いが絶えず、見どころ満載のお芝居でした。
贅沢言うと、もう一幕ぐらい夫婦の仲の良さが見えるシーンがあってもよかったかなぁとも思います。
ずっと見てたい夫婦だったから。

最後に、この作品のテーマは「茶番は現実には勝てないのか」というところだと思います。
登場人物たちがそこを芯に動いていくわけですが、井上ひさしのエンターテイメントに対する問がつまったお芝居だと思います。
芝居を愛する者として、この言葉がとても胸に刺さりました。



【二人椀久】

夜の部続いては『二人椀久』です。
大阪の豪商が太夫に熱を上げすぎて家に隔離され狂乱。
座敷牢を抜け出し、太夫の幻と踊るって舞踊です。

菊之助さんと七之助さんという、真っ白な百合と淡墨桜の共演です。
狂乱という文字を見ると、もっと視覚的にもヨボヨボだったり寂れていたりというのを想像していたのですが、菊之助さんは凛と綺麗な佇まい。
それでいて、踊りや表情にはこの世を手放したような色気があるのが恐ろしい。
『きれいに狂う』ほど恐ろしいものはありません。
菊之助さんのオーラの輪郭がくっきりはっきりしているため、尚更七之助さん演じる幻の中の太夫が淡く儚く見えるのです。
二人とも同じ空間に存在し踊っているのですが、明らかに存在している世界の違いを感じることができます。
最後の菊之助さんの指先に至るまでの表情は、オペラグラス必須です。



ただねぇ……
ただ……

個人的には、『浮かれ心中』と『二人椀久』の順番逆がよかったな!
ちょっと二人椀久での〆は切なすぎるわ!
笑顔で一日終わりたいっす!





~どうでもいいメモ~
お隣の席が大向うさんで、ちょっと新鮮だった。
あとお尻のエアウェーブが有能!








……明治座で残念な出来事がありました。
せっかく良かった舞台なのに、役者さんやお客さんではないところで「どうかな?」と思うところがあったので、劇場スタッフさんにも口頭で伝え、アンケートにも書かせていただきました。
改善されるといいな。