ひのきのぼうの沼日記

そう、人生は沼だらけ

十二月大歌舞伎 妹背山婦女庭訓

ちょっと前に久々に歌舞伎座へ行きました。
もしかして歌舞伎座は8月以来?
間空いたな~…

夜の部の妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)を見てきました。
杉酒屋・道行恋苧環三笠山御殿の三本立てです。

内容をざっくりとかいつまむと…
お隣に引っ越してきたイケメン求女くんに一目惚れして結婚の約束までしちゃった杉酒屋のお三輪ちゃん。
そこに求女くんに会いに恋仲の橘姫がやってきてバッチバチの三角関係に発展!
三笠山御殿で実は求女くんは藤原鎌足の息子・藤原淡海で、橘姫は敵方・蘇我入鹿の妹ということが判明しますが、ふたりの絆は変わらず。
一方お三輪ちゃんは求女くんに会おうと御殿に乗り込みますが、そこでまさか藤原さんの部下に刺されます。
実は入鹿を倒すには嫉妬燃えた女の血が必要だったとかで、ちょうど利用されるというファンタジー展開。
でもお三輪ちゃんは求女ちゃんの役に立てたと喜んで死んでいきましたとさ。


みたいな感じです。

ちなみに苧環は昔の糸巻のこと。
リリアンみたいなあれです←違う
なにやらこのお話は、鎌足とか入鹿とか奈良時代ベースのお話だそうです。
もちろん衣装とか見た目は普通の江戸時代ですけど。
見る前は「時代背景が古いとお話難しいんじゃないか」とも思っていたのですが、そんなことはありませんでした。
まぁいきなりファンタジー展開には驚きましたが、厨二作品にはよくある…(おっとそこまでだ
求女くんが橘姫に、お三輪ちゃんが求女くんに、苧環の糸をくっつけて後を追おうする場面から『道行恋苧環』というタイトルがついています。

三角関係というと、自分はやはり野崎村を思い出します。
妹背山も最初は野崎村のように、いじらしいお三輪ちゃんかわいいなと見ていたのですが、まぁ三笠山御殿からのお三輪ちゃんの変貌ぶりがすごい。
杉酒屋からのお三輪ちゃんの変貌を例えると、君に届けのくるみちゃん→小公女セーラ→鬼→エポニーヌみたいな?
いや、終始エポニーヌか?

杉酒屋はあまり上演されることが少ない場面らしいのですが、この場面があることによってお三輪ちゃんの心の変化がさらに奥深いものに感じられました。

お三輪ちゃんを演じたのは杉酒屋・道行では七之助さん。
三笠山御殿からは玉三郎さん。

とくに玉三郎さんが圧巻でした。
必死で求女くんを追いかけてきて御殿の女官たちにいじめられるのですが、そこでのまぁああああ可愛らしいこと。
本当に若い年頃の女の子がそこにいていじめられているのです。
そして突然刺されて女としての念が一気に放出されての迫力。
少女の中に眠る女が一気に解放された感じ。
しかし最期には、自分の死を歓ぶ愛のかたち。
玉三郎さんのお三輪はすべての感情が生々しく、痛々しいほど伝わってきて…

妹背山婦女庭訓=玉三郎さん劇場でした。

他の役者さんの感想書こうにも玉三郎さんの印象ばかり浮かんできます。


杉酒屋では中車さんの息子さん團子くんがかわいかったですね。
っていうかこの場面は團子くん演じる丁稚中心にお話回っていくような感じでもあるので、かなりいい役です。
本当に歌舞伎が好きなのが伝わってきて、團子劇場ですね。

その團子くんのお父さん、中車さんは初めての女形で登場です。
豆腐を買いに来るおばちゃん役です。
さすがにちょっと硬さはありましたけど、全然違和感なかったですよ。
歌舞伎の形は身に染みついたものではないかもしれないけど、お芝居は身に染みついている中車さんなので、すんなり物語に入り込めるんですよね。
こうやって遅い歌舞伎デビューの中車さんに沢山のチャンスをくださる玉三郎さんがいてくれて本当に良かった。


……

…うん。
本当に玉三郎さんの印象が強いわ。

てなわけで、早く昼の部も見に行きたいな~と思います。


あと、個人的には浄瑠璃の勉強をしたいなと。
道行は浄瑠璃が聞き取れないとちょっときついですね。
まだまだあまちゃんですので耳が肥えていない自分はきつかった。
イヤホンガイドをおすすめします。




~どうでもいいメモ~
お三輪ちゃんの気持ちを一言で…
「なんて日だ!」