ひのきのぼうの沼日記

そう、人生は沼だらけ

七月大歌舞伎 天守物語

先日、天守物語を見てきました。

玉三郎さんの台詞回しを聞くのは久々。
海老蔵さんも久々。
申し訳ないですが、あまり成田屋さんの興業には足を運んでいなかったので…
新鮮でした。

天守物語のあらすじは…
白鷺城の天守閣には異形の者が住んでいます。
そこのお姫様の妹さんが人間の生首を土産に遊びにきます。
お姫様はお返しに姫路の殿様の兜を(勝手に)用意していたのですが、ちょっと生首に比べたら…ということで、お殿様の鷹狩りで使う鷹を(勝手に)プレゼント。
したらその夜、その鷹を追って鷹匠天守閣へやってきます。
生きて返すことは許されないはずが、お姫様が惚れておとがめなし。
もう来ちゃダメよとお姫様は返してあげます。
だけど鷹匠天守閣から降りる途中で明かりが消えて、鷹匠再び天守閣へ。
何できたのーと言いつつ、お姫様は二人が会った証として、殿様の兜を(勝手に)あげます。
したら、鷹匠は兜泥棒と間違われ、あら大変。
再三天守閣へ。
追っ手から隠れようと、お姫様と鷹匠天守閣に祀られている獅子神様に隠れます。
獅子神様が動いて追っ手たちと戦いますが、獅子神様は目を衝かれてしまい、二人の目も見えなくなってしないます。
なんとか追っ手を追い払いますが、あー恋した相手の顔も見えない…あーこれからどうしよう…と泣く二人。
したら、その獅子神様を掘ったおじいさんが現れ、あら不思議。
目が見えるようになりました。

お姫様は玉三郎さん。
鷹匠海老蔵さん。


簡単に説明するとこんなお話。



天守物語といえば、個人的にはアニメ『モノノ怪』ですが…
こういう幻想小説好きとしては、たまらん設定です。
泉鏡花天才です。
泉鏡花が今の時代に生きていたら、大人気の児童文学作家になっていたんじゃないかとも思います。


それはさておき。



玉三郎さんの美意識が集約されたお芝居でした。
異形の者たちの時間の流れ方はとってもゆるやかで、おそらく玉三郎さんでなければ1時間47分のこの舞台を持たせられないと思いました。
下手するとただの退屈な舞台で終わってしまう気がしますし、そもそも安心して見ていられない…
さすが玉三郎さんです。
ゆるやかな時間の中で、玉三郎さんの気品・可愛らしさ・何物にも染まっていない白さが如何なく発揮されています。
前半は笑えるところも多く、玉三郎さん演じる姫君の仕草や台詞は面白いです。
しかし鷹匠が現れたぐらいから、どんどんシリアスに。
前半の雰囲気がとってもほんわかしているので、その対比でさらに重く感じます。

海老蔵さんは、本当にオーラがありますね。
上品さもあるし、きれいですね。
成田屋お家芸の荒事も海老蔵さんのエネルギーの大きさを見れて楽しいのですが、個人的にはこういう抑えた役の海老蔵さんの方が好きだったりします。
抑えていても芯の強さが見えるっていうのはエネルギーがとてつもなく大きいんですね。
玉三郎さんと並んでも引けを取らないオーラ、さすが成田屋の御曹司です。



総括すると、天守物語は『美』を追求した舞台だったと思いました。
美しいものを詰めに詰め込んだ結果、異形の者の人間との違いをさらに浮かび上がらせる。
そこが少しの恐ろしさにつながるんだと思います。




公演は29日まで。
あとちょっとしかないけど、是非劇場へ足を運んでみてください。