ひのきのぼうの沼日記

そう、人生は沼だらけ

渋谷・コクーン歌舞伎 第十四弾 『三人吉三』

見に行ってきました!
コクーン歌舞伎三人吉三

中村勘九郎:和尚吉三
中村七之助:お嬢吉三
尾上松也:お坊吉三

この三人の盗人の縁の物語。
(詳しいあらすじは公式で見てください…)

私は初コクーン歌舞伎
前回の勘三郎さんによる三人吉三は映像でしか見ていません。
そんな私の感想です…




若いエネルギーがあふれる舞台でした。
上三人に加え、十三郎役の新悟さん、おとせの役の鶴松くんも若いです。
役柄と役者の年齢が近いこともあり、とてもリアルに感じられました。
深みでいったら、前回の勘三郎さんや橋之助さん・福助さんには敵わないかもしれません。
でもその若さはこのメンバーでしか出せない。
今しか出せないものだと思います。

狭く深い縁の中で三人が出会い、運命になすすべもなく飲み込まれていくのはとても切なかったです。
ひとつでもピースが欠けていたら、出会うことなく、義兄弟の契りを結ぶこともなかったであろうに。
でも三人が出会い、深い縁で結ばれたからこそ、それぞれの血や出生に対峙することが出来た。
彼らの人生は決して幸せではなかったでしょうが、最期は幸せだったのかなと考えると、帰りの道すがら涙が止まりませんでした。

勘九郎さんは、本当に所作が綺麗で若いのに踊りが上手いです。
ふいに聞こえる声が勘三郎さんに似てて、時々びくっとしました。
前作の評判もありますし、和尚吉三の大きな包容力にも向かい合うのは大変だったと思います。
でも勘三郎さんとは違った華があり、その華もどんどん大きくなっていくと思います。
一本筋が通っている役者さんです。

七之助さんは、絵になる綺麗さ、色っぽさ。
お嬢吉三が本性現しても色っぽい。
女よりも女らしい意志の強さを持ち、盗人でさんざん悪事も働いてきても、人間のうぶな部分が残っています。
そのうぶさがそう見せたのか、和尚とは義兄弟の契りを交わしましたが、最期は親を助けようとする子供のようでした。
また、お坊にどんな感情を抱いていたか気になります。
和尚・お坊と出会え、最期に実の親とも出会え、本当に愛に触れられたんでしょうね。

松也さんは、初めて拝見しました。
今まで映像でも舞台に立っている姿を見たことがなかったのですが、声も通るし演技も若々しい大きなもので、とても見やすい役者さんだなと思いました。
三人の中で一番、運命に翻弄されたんじゃないでしょうか。
幼い頃に家がおとり潰しになり、和尚の父親を殺してしまったり…
でもお坊もお嬢と同じく、人間のうぶな部分がとっても残っているように思います。
お坊・お嬢のそのうぶさが純真無垢で、二人の関係を深い愛で結びつけているような気がします。
また親に対する愛を和尚に重ねていたのではないでしょうか。

新悟さんの十三郎と鶴松くんのおとせも微笑ましかったです。
新悟さんは普段女形が多いですから線の細い感じ。
そこに鶴松くんの人のいい、でもちょっと積極的な町娘。
ナイスバランスでした!


そんな若い面々を支える方々も豪華。

笹野高史さんは、存在感の大きさとかではなく、そこにいるのが普通という存在感。
古典と現代を結びつける存在でした。
また、勘九郎との親子役が本当の親子のようでした。

亀蔵さんはオールラウンダーですね。
なんか私の見に行ってる演目で、お見かけする確率が高いです。
どんな役でもこなしちゃう、コメディーもいける。
安定感すごいです。




長々と書いていきましたが、とにかくすごい舞台だったってことです!
ご興味とお時間がある方は是非見ていただきたい。
当日券で立ち見になるかもしれませんが、テンポも良いので疲れませんよ。

舞台は生で見るに限りますが、その中でも今回の歌舞伎は、三人の若さを前面に押し出しているような演出なので、間違いなく今しか見れません!