ひのきのぼうの沼日記

そう、人生は沼だらけ

二月大歌舞伎 毛谷村

けたにむらじゃないよ。
けやむらだよ。

というわけで、ここ最近心と身体が地に足ついていなかったため、歌舞伎に行って参りました。
歌舞伎を見ると自分のいるべき場所がわかるというか、役者さんたちの舞台にどっしり根を這っている力強さを見るとこれが「生きる」ってことなんだなと思わされます。
生きるって瑞々しくて華やかなんですよ。
ただ個人的に、これが現代演劇だとそうはいかない…
歌舞伎の公演って基本客席やロビーが明るいじゃないですか。
あれがいいんです。
照明的にも雰囲気的にも「へいらっしゃい!祭りだよ!」というオープンさ。
あの明るさが、現実とお話の世界の境目を薄くしてくれるんです。
それが現代演劇や小劇場はエネルギッシュなんだけど「どうぞお入りください」という感じ。
客席とかロビーとか、一瞬暗くなって現実世界から引き離されるんです。
観劇後の充実感と空しさはディズニーランドからの帰り道に似てるかも。
その点、軽い気持ちで入れて出れる歌舞伎って心にも優しいと思うのです。


と、話が逸れましたが毛谷村。
『彦山権現誓助剱』の一部分。

あらすじ…
毛谷村に住む百姓・六助と微塵弾正の試合の場面から始まります。
六助は剣の達人ですが、老いた母のため仕官したいという弾正の為わざと負けてあげます。
で、無事に仕官できることになった弾正さんは意気揚々と去ります。
次に虚無僧が出てきて六助に斬りかかります。
「見ず知らずの奴がなんでいきなり斬りかかってくんねん!」状態です。
虚無僧の正体は、六助の剣術の師・吉岡一味斎の娘のお園。
一味斎の仇と間違えて斬りかかってきちゃったのです。
ついでにお園は六助の許嫁ということがわかり、お園の態度一変。
その後、色々あり、一味斎の仇は弾正だったということが判明。
六助は仇を取りに行くのでした。


六助…尾上菊五郎
お園…中村時蔵



ベテラン俳優と可愛い子役のお芝居を堪能させていただきました。

まず私、菊五郎さんに謝らねば。
俳優祭での菊五郎劇団や千手観音、豆をまけば赤鬼のコスプレ。
息子の婚約記者会見ではほろ酔いで登場と、私の中で「おもしろいおじさん」というイメージの方が先行しておりました。
忘れてました。
この人、人間国宝でしたわ。
舞台の菊五郎さん、めちゃくちゃかっこいいっすよ。
声も良いし、顔も良いし、最高でした。
六助の人の良さは菊五郎さんの人の良さに通じるところがあるように思えます。
六助は拾ってきた子供と一緒に生活しているのですが、その子とのシーンとかぽかぽかしますよ。
でも、最後はキリリと勇ましい。


時蔵さんはいくつになられても可愛らしい。
女役の第一人者のおひとりですからね。
お園はめちゃくちゃ強いです。
こういう強い女性は女武道と呼ばれるとのこと。
襲ってくる忍びの者を蹴散らしながら六助に今までの境遇を語るのですが、スカッとする強さ。
その強さも荒々しくなく、美しい強さ。
忍びを蹴散らしながら美しいって今時、由美かおるぐらいよ?
そして六助が許嫁だとわかった途端態度一変で恥ずかしがる様子は笑いを誘います。
いきなり女房らしくなってお米を炊こうとかするのに、空焚きしちゃったりとおっちょこちょいな部分がカワユス。
このお園のキャラクターの変化が見どころでしょうか。



このお話は、前半のくすっと笑えるコミカルさからの後半の仇討ものへの変化があるので、六助もお園も、静と動の二つの面を味わえます。
役者さんのいろんな表情が見れますよ。
あと子役ちゃんが頑張っております。





~どうでもいいメモ~
お婆ちゃんが家の奥から出てきたときびっくりしました。
えっ六助そんな人匿ってたの!?
知らなかったよ!