ひのきのぼうの沼日記

そう、人生は沼だらけ

寿初春大歌舞伎 女暫

初春大歌舞伎の夜の部二幕目は『女暫』です。

歌舞伎十八番『暫』のただただ女版という遊び心あふれた作品。
歌舞伎を知らない人も様式美を楽しめ、歌舞伎を知っていれば尚楽しめる作品です。

あらすじ。
範頼が天下とるぞーガッハッハと宴をしているとき、部下の義高、他数名がその態度をいさめたりとかして範頼が不機嫌に。
首打たれちゃうというところに「しば~らく~」という女の声が止めに入る。
現れたのは巴御前
強い巴御前は皆を逃がして、自分も颯爽と去っていくのでしたとさ。

と、超簡単に説明しましたが、あらすじを知らなくても楽しめます。
それだけ様式美に特化した作品だということです。
前の番町皿屋敷とは真逆。
皿屋敷が心象表現に特化した作品なら、こちらは感情とかわかりません。
特に脇に控えている役とか…



この作品の特に面白いのが、歌舞伎ということを逆手に取った…いや、開き直った演出です。

たとえば巴御前に女鯰若菜という敵役が「ちょっとそこどいて」と声をかけられる場面では、若菜は「巴御前さん」ではなく「大和屋のお姉さん」と声をかけ、それに巴御前も「中村屋のお姉さん」と答えます。
巴御前演じる玉三郎さんの屋号が大和屋、若菜演じる七之助さんの屋号が中村屋
役名と同等かそれ以上に役者の名前に重きがある歌舞伎だからこその遊び心。

もう一つ、巴御前が去っていくとき。
本家男版『暫』は最後、六方という独特のステップ?歩き方で去っていくのですが、巴御前は女。
それが出来ないということで、裏から番頭さんを呼んでその場で六方のやり方をレクチャーしてもらうのです。
もう巴御前としてではなく、巴御前役の玉三郎さんとして。

面白すぎます。
全体華やかで晴れやかで目にも楽しい舞台です。



巴御前役の玉三郎さんがさすがというか…
今、女暫が満場一致でできるのは玉三郎さんぐらいでしょうね。
華と可愛さとお茶目さがすごい。
個人的には、また若菜と巴御前が並んだ時の七之助さんと玉三郎さんのツーショットがいいんですよね。
5年、10年後には七之助さんが巴御前をやる日が来るのかと思うと胸が熱いです。



この演目の見どころは、様式美。
心象表現とか置いといて、可愛さとお茶目さ、舞台の鮮やかさを楽しんでください。




~どうでもいいメモ~
見る前の色々な考えは杞憂に終わりました。
「やっぱり玉三郎さんはすごかった」